インターネット転送を導入した自治体事例5選と構成パターンの選び方
三層分離の見直しでインターネット転送の導入を検討しているが、他の自治体がどう進めたのか分からない──そんな情報システム担当者に向け、代表的な事例と構成の選び方を整理しました。
自治体のインターネット転送とは、LGWAN接続系の端末からインターネット上のクラウドサービスを安全に利用するための仕組みで、すでに全国で数十の自治体が導入に踏み切っています。総務省が示す「β'モデル」や「αモデル」と呼ばれる構成が代表的です。一方で、従来の三層分離を長年運用してきた現場では「インターネット転送に切り替えて本当に安全なのか」「どの構成パターンを選べばいいのか」という声が根強く残っています。本記事では、実際に導入が進んだ自治体の事例を複数取り上げながら、構成選定の考え方と注意点を整理します。
2020年代に入り、自治体を取り巻くネットワーク環境は大きく変わりつつあります。きっかけは総務省「自治体情報セキュリティ対策の見直し」で示されたβ'モデルの容認です。従来のβモデルでは業務端末がLGWAN接続系に閉じ、インターネット利用は別端末で行う完全分離が前提でした。しかしクラウドサービスの業務利用が不可欠になった現在、職員が2台の端末を使い分ける運用は生産性を著しく下げていました。β'モデルではLGWAN系端末からインターネット通信をセキュアに転送し、1台の端末でクラウドも庁内システムも扱えるようになります。この流れはゼロトラストの考え方とも親和性が高く、導入検討を進める自治体が増えつつあります。
具体的な導入パターンを見ると、大きく3つに分かれます。第一に、SBC(Server Based Computing)方式で仮想ブラウザを経由しインターネット接続を転送するパターン。神戸市や宮崎県都城市などがこの方式で先行しました。第二に、SWG(Secure Web Gateway)をクラウド上に配置し、端末からの通信をポリシー制御するパターン。比較的小規模な自治体でも導入しやすく、茨城県つくば市などが採用しています。第三に、SASE(Secure Access Service Edge)を全面導入し、VPN廃止まで踏み込むパターンで、これは都道府県単位の広域連携で検討が進んでいます。いずれの場合も、まず対象業務の洗い出しとリスク評価を行い、段階的に移行するのが成功事例に共通するステップです。
導入でつまずきやすいポイントは3つあります。1つ目は「対象業務の選定が曖昧なまま全庁展開してしまう」ことです。先行自治体の多くは、まず窓口業務や内部事務など影響範囲が限定的な部署で試行し、課題を洗い出してから範囲を広げています。2つ目は「既存のファイル無害化ツールとの整合性」です。三層分離時代に導入した無害化製品がβ'モデルと競合し、二重投資になるケースが見られます。移行計画の段階で既存ツールの契約期間と機能重複を精査することが欠かせません。3つ目は「職員への説明不足」です。ネットワーク構成が変わると操作手順も変わるため、ヘルプデスクへの問い合わせが一時的に急増します。マニュアル整備とハンズオン研修をセットで用意した自治体は、移行後の混乱を最小限に抑えています。
インターネット転送の導入は、ネットワーク強靭化の「次の一手」として全国の自治体で選択肢に入りつつあります。ただし、構成パターンの選定から既存システムとの整合性確認、職員研修まで、検討すべき論点は多岐にわたります。合同会社Gel-bananaでは、京都府福知山市を拠点に自治体DXの技術支援を行っており、ネットワーク構成の見直しや情報セキュリティポリシーの改定支援にも対応しています。オンラインで全国どこからでもご相談いただけますので、まずはお気軽に info@gel-banana.jp までお問い合わせください。
FAQ
- インターネット転送のβ'モデルとは何ですか
- β'モデルとは、LGWAN接続系の端末からインターネット通信をセキュアに転送し、1台の端末で庁内システムとクラウドサービスの両方を利用できるようにするネットワーク構成です。総務省のガイドライン見直しで選択肢として認められ、従来の完全分離(βモデル)に比べ業務効率の向上が期待できます。
- インターネット転送を導入した自治体はどのくらいありますか
- 2026年時点で、神戸市や都城市、つくば市をはじめ、全国で数十の自治体がβ'モデルやSASE型構成の導入に着手しています。都道府県単位で共同調達を検討する広域連携の動きも出てきており、今後さらに増加すると見られます。
- インターネット転送の導入にはどのくらいの期間がかかりますか
- 規模や構成パターンによりますが、対象業務の選定からパイロット運用、全庁展開までを含めると、おおむね1年から1年半程度が目安です。先行自治体では、まず一部部署で3〜6か月の試行期間を設け、課題を洗い出してから段階的に拡大する進め方が主流です。
